こんにちは!ふるもーす(@frumosart)です!
今回は、三冊目の絵本『ビーバーとビーすけの竜宮城大作戦』の制作ログから、Scene1「夏の海」のイラストをAIでリマスターした制作工程について書いていきたいと思います!
今回のテーマは、もともと自分で描いたイラストを、AIの力を借りて印刷絵本向けに生まれ変わらせること。

といっても、AIに画像を渡して「いい感じにして!」とお願いするだけではありません。
原画の構図を確認したり、画風を決めたり、キャラクターの質感を調整したり……。
一枚の絵を完成させるまでに、実はいろいろな工程があるんです。
この記事では、scene1が完成するまでの舞台裏と試行錯誤を豊富な画像と共にご紹介していきます。
・AIを使った絵本制作に興味がある方
・自分の描いたイラストをAIでリマスターしてみたい方
・AIイラストの画風統一やアートディレクションが気になっている方
・生成AIを使った絵本制作の具体的な工程や失敗談を知りたい方
は是非読んでみて下さいね!
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Project LUMINA|竜宮城大作戦 制作ログ総まとめ
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1. オリジナル原画をAIでリメイク!Scene1のイラストリマスター計画
今回制作するのは、物語の最初に登場する「夏の海」のシーンです。
ビーバー兄弟とデブラが海へやって来て、これから始まる冒険へ読者を案内する場面ですね。

Scene1は物語の入口になる大切な一枚
この絵には、もともと自分で描いた原画が存在しています。
キャラクターのデザインはもちろん、構図や位置関係、物語の演出も、すでに原画の段階で決めてあります。
今回やりたいのは、これを別の絵に作り変えることではありません。
自分が描いた世界を守りながら、印刷絵本にふさわしい質感へ仕上げること。
これがリマスターの基本方針です。ちなみに、このScene1の制作に取りかかった時点では、ほかのシーンの制作もかなり進んでいました。
つまり、今回は完全な手探りではなく、それまでの試行錯誤で得たノウハウを使って、初期のイラストを改めて仕上げる作業でもあります。
目指したのは「夏の絵本を開いた瞬間の空気」
最初に考えたのは、この絵を見た読者に何を感じてもらいたいか、ということでした。
広い青空、明るい海、ふわふわした雲。そして、これから何か楽しいことが始まりそうな予感。
物語の後半には、竜宮城やクジラ親子など、印象的な場面がいろいろ登場します。
でも、最初の一枚から壮大な演出をする必要はありません。むしろ、読者が気持ちよく物語の世界へ入っていけるような、明るく柔らかな絵にしたかったんです。
そこで今回決めたコンセプトが、Soft Gouache Summer Openingという言葉でした。
日本語にすると「柔らかなガッシュで描く、夏の物語の始まり」といったイメージでしょうか。
Soft=柔らかな質感
Gouache=ガッシュ絵具のような表現
Summer=夏の季節感や色温度
Opening=物語の始まりという役割
この4つをまとめた、制作の合言葉です。
単に「ガッシュ風の絵にして」と指定するよりも、どんな空気を持った絵にしたいのかが明確になります。この短い言葉が、後の工程でも非常に役立ちました。
2. Stage0|まずは印刷用の構図を確認する
最初に行ったのは、意外にも着彩ではありません。印刷絵本を前提にした、レイアウトの確認です。
絵をきれいにする前に、配置を決める
今回の絵本は、AmazonのKindle Direct Publishing(KDP)を使ってペーパーバックとして出版する計画でした。
そのため、画面上できれいに見えるだけでは不十分です。
実際に紙の本になったとき、キャラクターが切れてしまったり、見開きの中央に重要な部分が入り込んでしまったりしないように考える必要があります。

ここで確認したのが、
・Safe Area(重要な絵柄を収める安全な範囲)
・Story Safe Area(物語上、大切な要素を守る範囲)
・ノド(本を開いたときの中央側)
・小口(本の外側)
・キャラクターの配置
といった項目です。
デブラの位置を少しだけ調整

この工程では、デブラの位置をわずかに右へ調整しました。ほんの小さな変更ですが、印刷時の安全性や構図のバランスを考えると大切な作業です。

そして、この段階で構図を確定させました。後の工程では、基本的にキャラクターの位置や大きさを変えません。
これを制作中は「Locked(ロック)」と呼んでいます。簡単に言うと、もう決定した部分は勝手に変更しないというルールですね。
最初に構図を決めておけば、後から着彩や質感を調整するときに、配置まで変わってしまうトラブルを減らせます。
3. Stage1|AIに描いてもらう前に画風を設計する
次は、作品の方向性を決める工程です。ここで重要になるのが「アートディレクション」。
ちょっと難しそうな言葉ですが、簡単に言えば、作品全体の見た目や表現の方向性を決めることです。
AIにもアートディレクションが必要!
今回のScene1では、
・背景は明るく柔らかな夏の海
・青を基調にしながら、雲やキャラクターには温かなクリーム色を使う
・強いデジタル的な発色を避ける
・CGのような光沢ではなく、絵具のような質感にする
・背景はキャラクターより目立たせない
という方針にしました。
ここでも先ほどの「Soft Gouache Summer Opening」が判断基準になります。

何かを追加したくなったときも、それが今回のコンセプトに合っているかどうかで判断できます。
こうして考えると、AIイラスト制作も普通の絵作りと似ていますよね。
何を描きたいのか、どう見せたいのか。
そこが決まっていなければ、AIがどんなにきれいな絵を生成してくれても、自分の作品として納得できるとは限りません。
4. Stage2|夏の海の背景を制作する
いよいよ背景制作です!今回は、広い青空と海というシンプルな構図だったこともあり、最初の生成からかなり理想に近い仕上がりになりました。
背景は意外なほどスムーズに完成!
柔らかな雲、夏らしい光、遠くまで広がる海。背景だけでも絵本らしい世界観が感じられます。
実は、背景を作るときに大切にしている考え方があります。
それは、
背景は、描き込めば描き込むほど良くなるわけではない
ということです。
背景があまりにも豪華になってしまうと、肝心のキャラクターが埋もれてしまいます。Scene1では、空と海のシンプルな構造が逆に大きな強みになりました。
キャラクターが自然に暮らしている世界を感じさせる。でも、背景そのものが主役にならない。そんなバランスを目指しました。
5. Stage3|キャラクターを絵本らしく着彩する
背景が決まったら、次はキャラクターの着彩です。ここで今回、大きな発見がありました。
形は木のおもちゃ、表面はガッシュ絵具
ビーバー兄弟の造形は、もともと丸みのある木のおもちゃのようなイメージです。私が大切にしているのは、「コロッ・ツルッ・もちっと」という独特の量感。
ところが、この「ツルッ」という言葉が曲者でした。

AIにそのまま伝えると、表面がピカピカしたCGフィギュアのような仕上がりに寄ってしまうことがあるんです。
それはそれできれいなのですが、今回目指している絵本の質感とは少し違います。そこで考えたのが、
形は木のおもちゃ。表面はSoft Layered Gouache。
という考え方でした。
Soft Layered Gouacheとは、柔らかなガッシュ絵具を薄く重ねたような質感を目指す、私たちの制作上の表現ルールです。

キャラクターの形は丸く滑らかなまま。でも、表面はマットな絵具のように仕上げる。この2つを分けて考えることで、理想にかなり近づきました。

2枚を並べてみると多少違いが分かっていただけるかと思います。
デブラの着彩で分かった、筆跡の落とし穴
一方、デブラの着彩では少し苦戦しました。

初期の生成画像は、ビーバー兄弟に比べると表面がデジタル的で、ツルッとした印象が残っていたんです。

そこで、緑色の部分に薄い色の重なりを加えてみました。ところが、今度は筆跡が強くなりすぎて、絵画作品のような雰囲気になってしまいました。
どうやら、筆跡を増やせばアナログらしくなる、という単純な話ではないようです。
そこで調整したのが、色の揺らぎの細かさ。
大きな筆跡で質感を表現するのではなく、まずキャラクターの丸い量感を作り、その上に細かな色の変化を薄く重ねるようにしました。

すると、ずっと自然な絵本らしい質感に近づきました。
今回の発見は、
筆跡を見せることと、絵具の重なりを感じさせることは違う。
ということ。
こういう細かい違いを言葉にしていくのも、AIと一緒に絵を作る面白さだと思います。
6. トラブル発生!なぜか雲が増えていく問題

さて、ここでちょっと面白いトラブルが発生しました。
Stage3では、本来キャラクターの着彩だけを変更する予定でした。背景はすでに完成しているので、触らないように指示しています。
ところが、生成を繰り返しているうちに……。

なぜか背景の雲が少しずつ増えていったんです!
キャラクターしか編集していないはずなのに……

キャラクターを直しているだけなのに、背景まで変わってしまう。これもAI画像生成ならではの難しさですね。
「背景は変更しないで」と指示していても、必ずしも完全に固定されるわけではありません。
何度も生成を繰り返すうちに、本来変更したくない部分まで少しずつ変わってしまうことがあります。
解決策は、良い部分だけを組み合わせること
そこで今回は、背景まで含めて何度も生成し直すのではなく、完成済みの部分を活用する方針にしました。
Stage2で決めた背景と、Stage3で仕上げたキャラクター。
それぞれの良い部分を固定し、背景とキャラを必要に応じてAIに合成・統合してもらい、1枚の絵にするという考え方です。

実はこの方法、以前の制作でも学んだことでした。AIにすべてを一度で完成させてもらう必要はありません。
むしろ、完成した部分はそれ以上触らず、必要なところだけを修正する方が安定する場合があります。
AIで作る部分と、自分で編集する部分を分ける。
これも、絵本制作を進めるうえで大切なポイントになりました。
7. Stage4|キャラクターの線を背景になじませる
続いて行ったのが、Line Integrationという工程です。これは、キャラクターの輪郭線を背景の画風になじませる作業です。
線を薄くすればいいわけではない
原画のキャラクターには、はっきりした黒い主線があります。
一方、今回の背景は柔らかなガッシュ風。そのまま組み合わせると、キャラクターだけが切り抜き画像のように浮いて見える可能性があります。
そこで、
・黒い線にキャラクター自身の色を混ぜる
・光が当たる側の輪郭線を少し柔らかくする
・絵具の塗り際へ線をなじませる
・影側や顔の重要な線は残す
といった調整を行いました。



デブラのゴーグルで大失敗?

ここでも、ちょっとした発見がありました。
デブラのゴーグルの線をさらに弱める実験をしたところ、ゴーグルだけでなく、顔そのものが分かりにくくなってしまったんです。

これは困りました。柔らかい絵にしたいからといって、キャラクターの表情やデザインまで分かりにくくなっては本末転倒です。
そこで気づいたのが、
線をなじませることと、線を消すことは違う。
ということでした。
キャラクターを認識するために必要な線は残す。一方、背景の空気になじませても問題ない線は柔らかくする。
つまり、線の役割を見極めることが大切だったんですね。
8. Stage5|一枚の絵に同じ空気を流す
ここまでで、背景、着彩、線の調整が終わりました。次は、画面全体を一枚の絵としてまとめる工程です。
キャラクターと背景を自然に統合する
今回の合言葉は、
Soft Gouache Summer Air — Minimal Atmosphere Pass
夏の柔らかな空気で、必要最小限の調整をするというイメージです。ここでは、2つの方向性を比較しました。

ひとつは、海面から反射した青緑色の光をキャラクターに加える案。

もうひとつは、夏の柔らかな空気感によって画面全体をまとめる案です。
最終的に採用したのは、後者でした。海面からの反射を加える方法も、環境のリアリティを出すという意味では魅力があります。
でも、今回作りたいのはリアルな海のイラストではありません。物語の始まりにふさわしい、柔らかな絵本の世界です。
一冊の絵本を「空気」でつなぐ
今回、私たちが大切にしたのが「One Atmosphere」という考え方です。
Scene1は明るい夏の海。その後は海中へ進み、竜宮城やクジラ親子の場面へと続いていきます。当然、それぞれの場面で色や光は変わります。
でも、すべての絵がバラバラの画風では、一冊の絵本としてまとまりません。
そこで、場面ごとの雰囲気は変えながらも、絵具の質感や空気の表現には共通性を持たせたいと考えました。
一枚ずつを豪華にするより、一冊を通して同じ世界に見えること。
今回のScene1でも、この考え方を優先しました。
9. Stage6|最後は印刷向けの品質確認
いよいよAIによる制作の最終工程です。Stage6では、印刷したときに色や階調が失われないように、必要最小限の調整を検討します。
きれいにするより、完成した絵を守る
ここでの合言葉は、Protect, Don't Enhance.
「より派手にするのではなく、今ある表現を守る」という意味です。
以前の制作では、印刷向けの補正としてテクスチャやシャープネスを強めた結果、せっかく完成した絵の雰囲気まで変わってしまうことがありました。
そこで今回は、絵をさらに演出することは避ける方針にしました。
海の暗さを守る?それとも明るさを守る?
今回検討したのは、大きく分けて2つの方向性です。

ひとつは、海の暗い部分の階調を重点的に守る案。

もうひとつは、雲やキャラクターの顔、お腹など、明るい部分の柔らかな階調を守る案です。

最終的には、明るい部分の階調を守る方向を採用しました。
なぜなら、Scene1で最も大切にしたかったのは、海のドラマチックな表現ではなく、夏の柔らかな空気だったからです。
ここでも、最初に決めたコンセプトが判断の基準になっています。
こうして、Stage0からStage6までのAI制作工程がすべて完了しました!
最終採用候補は次の4枚に絞られました。これらを実際に印刷してどう見えるのかによって、実際に使う絵が決まります。




なお、この段階で完成したのはAIによる制作工程です。
実際の紙に印刷したときの見え方については、この後の印刷確認工程でチェックしていき、その後でキャラクターの表情等、細部の修正を手動で行っていきます。
10. 今回最大の発見!AIに渡す原画は完成画でなくてもいい
今回の制作で、個人的にかなり大きな発見がありました。
それは、
AIに渡す背景の原画は、必ずしも完成された絵である必要はない。
ということです。
原画は「完成した絵」ではなく「設計図」でもいい
これまで、AIにイメージを正確に伝えるためには、できるだけ完成形に近い原画を描いた方がいいと思っていました。
でも、今回の制作を振り返ると、もっと大切なことが見えてきました。それは、空間の意味を明確に伝えることです。
例えば、
・何が描かれているのか
・どこに配置されているのか
・どのくらいの大きさなのか
・何が手前で、何が奥にあるのか
・キャラクターと背景がどういう位置関係なのか
といった情報です。
今回のScene1は、空、海、ボート、キャラクターという構造がとても明快でした。そのため、AIが構図を解釈しやすく、背景制作も比較的スムーズに進んだと考えられます。
簡略化はOK、曖昧化はNG!
例えば、森の背景を作るとします。木の葉っぱを一枚ずつ描き込む必要はないかもしれません。
でも、「ここに大きな木」「この位置に道」「キャラクターの後ろにキノコ」といった配置は、はっきりさせた方がよさそうです。

つまり、上手に描くことより、何を描きたいのかを明確にすること。
この考え方を、制作ログでは「Background Blueprint Principle(背景設計図の原則)」と呼んでいます。
もちろん、背景そのものをAIと一緒に考える方法もあります。
ただ、作者の頭の中に明確なイメージがあるなら、それを曖昧にせず設計図として伝える方が、意図した仕上がりに近づけやすいと感じました。
今回の発見は、今後の新しい絵本制作にも活かせそうです。
11. なぜ今回の制作はスムーズだったのか?
ここまで振り返ってみると、今回のScene1は、それまでの制作に比べてかなりスムーズに進みました。
その理由は、単にAIの生成結果が良かったからではないと思います。
大きかったのは、作業の目的を工程ごとに分けたことです。
Stage0では構図を決める。
Stage1では画風とコンセプトを決める。
Stage2では背景を作る。
Stage3ではキャラクターを着彩する。
Stage4では線を調整する。
Stage5では全体の空気感を統一する。
Stage6では印刷向けの品質を確認する。
このように、ひとつの工程でいろいろなことを同時に変更しないようにしました。
制作中は、これを「1 Stage = 1 Purpose」と呼んでいます。
もうひとつ重要だったのが、完成したところで作業を止める判断です。
AI画像生成では、何度も生成すれば必ず良くなるとは限りません。せっかく良くなった部分が、次の生成で崩れてしまうこともあります。
今回の雲増殖問題も、その一例ですね。だからこそ、納得できる仕上がりになったら、それ以上触らない勇気も必要なのだと思います。
まとめ|AI絵本制作で大切なのは、自分が何を描きたいか
というわけで、今回は『ビーバーとビーすけの竜宮城大作戦』のScene1リマスター工程をご紹介しました!
今回の制作を振り返って、特に印象に残ったのは次の5つです。
・原画の構図やキャラクターデザインを土台にすること
・生成前にコンセプトと画風を決めること
・工程ごとに変更する部分と守る部分を分けること
・生成結果を比較して、自分の目線で採用案を選ぶこと
・完成した表現を守るために、あえて修正を止めること
そして、今回生まれた大きな発見が「原画は設計図でもいい」という考え方でした。
AIを使うから原画を描かなくてもいい、ということではありません。むしろ、AIを使うからこそ、自分の頭の中にある世界をきちんと設計して伝えることが重要なのだと思います。
何を描くかは作者。どう美しく表現するかはAI。
もちろん、AIが出してきた絵をそのまま採用するわけではありません。
どの色がいいのか、どの質感が作品に合っているのか、どこまで修正するのか。最終的に決めるのは自分自身です。
今回のScene1は、物語の最初の一枚であると同時に、今後の絵本制作の方法を改めて考えるきっかけにもなりました。
これからも、そんな試行錯誤の記録を少しずつ紹介していきたいと思います!
以上、ふるもーすでした!
📖試行錯誤の先に、一冊の絵本が生まれました。
AIと一緒に悩み、描き直し、何度も試して完成した『ビーバーとビーすけの竜宮城大作戦』。

この制作ログで紹介してきたイラストや物語が、実際に一冊の絵本になっています。

『ビーバーとビーすけの竜宮城大作戦』
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