こんにちは!ふるもーす(@frumosart)です!
今回は、三冊目の絵本『ビーバーとビーすけの竜宮城大作戦』の制作ログから、Scene7「乙姫との対面」のイラストをAIでリマスターした制作工程について書いていきたいと思います!
前回のScene6では、海の生き物たちに捕まったビーバー兄弟とデブラが、ついに竜宮城へ連れていかれました。
そして今回、いよいよ城の主である乙姫と初対面です!
「海を壊しに来たわけじゃないんです!」
必死に事情を説明するビーバー兄弟とデブラ。それを威厳のある態度で聞く乙姫。さらに周囲には、怒りや疑いを残したまま、成り行きを見守る海の生き物たちがいます。
なんとも緊張する場面ですね!
さて、今回のリマスター制作では、これまでとは少し違った課題がありました。それは、「緊張感のある場面を、どうやって絵で表現するのか?」ということです。
普通なら、画面を暗くしたり、影を強くしたり、重々しい色を使ったりする方法が考えられます。
でも、今回の乙姫は悪役ではありません。竜宮城も、恐ろしい場所ではありません。むしろ、温かくて美しい空間であってほしいんです。
では、温かい雰囲気を保ちながら、どうやって緊張感を表現すればいいのでしょう?
今回は、この難しい問題に取り組むことになりました。

今回は、竜宮城内部の背景制作から、キャラクターの着彩、輪郭線の調整、感情表現の比較実験、そして印刷保護まで、制作工程を順番に振り返っていきます!
・AIを使った絵本制作に興味がある方
・イラストで感情や雰囲気を表現する方法を知りたい方
・AI画像生成で背景を描き込みすぎてしまう方
・AIイラストを自然な手描き風に仕上げたい方
・AIによる画像修正の判断基準に興味がある方
は是非読んでみて下さいね!
⇒シーン6:AI絵本制作「完成させすぎない」技術とイラスト修正論
1. ついに乙姫と対面!でも、怖い場面にはしたくない
Scene7は、物語の中でも大きな転換点です。
前回、初めて外観が登場した竜宮城。今回は、その内部が初めて描かれます。
つまり、これまで遠くから眺めていた竜宮城が、キャラクターたちが実際に足を踏み入れ、誰かと出会い、会話する場所になるんです。
竜宮城の中には、どんな世界が広がっている?

城の中には乙姫がいます。その周囲には、カニ、エビ、マンタ、亀たち。そして、ビーバー兄弟とデブラ。登場人物たちが一堂に会する、なかなか重要な場面です。
ここで考えなければいけないことがありました。竜宮城の内部は、今回初めて描く場所です。だから、読者には「こんな場所だったんだ!」と感じてほしい。
でも、背景を豪華に描き込みすぎると、今度はキャラクターたちの対話が目立たなくなってしまいます。今回の主役は、あくまで乙姫と主人公たち。竜宮城の内部を紹介する場面ではありません。
そのため、背景を成立させながらも、物語の中心はキャラクターたちに置く必要がありました。
温かい。でも、安心できるわけではない
そしてもうひとつ。今回のSceneには、独特の感情があります。
ビーバー兄弟とデブラは、乙姫の前で必死に事情を説明しています。この先どうなるのか分かりません。周囲の海の生き物たちも、まだ怒っています。
だから、緊張感は必要です。でも、乙姫は悪役ではありません。竜宮城そのものも、恐ろしい場所ではないんです。
そこで今回のアートディレクションでは、こんな言葉を設定しました。
Warmth without comfort.
「温もりはある。しかし、安心はさせすぎない。」
温かく、美しい空間。でも、どこか少しだけ張り詰めている。今回目指したのは、そんな繊細な雰囲気でした。
これが、後のStage5でかなり大きな比較実験につながっていきます。
2. Stage0|画面から切れているキャラクターも、構図の一部
まずは印刷用レイアウトの確認から始めました。
今回の原画には、上段にビーバー兄弟、デブラ、乙姫が配置されています。そして下段には、カニ、エビ、マンタ、亀たち。
下段のキャラクターたちは、なぜ見切れているのか?

ここで特徴的なのが、下段のキャラクターたちです。
実は、彼らの体は画面の外へ大きく切れています。一見すると、印刷するときに困りそうな構図ですよね。
でも、これは失敗ではありません。もともとの原画から存在していた、意図的な構図なんです。
そこで今回は、印刷用の塗り足しやセーフエリアを確認しながらも、構図そのものは変更しないことにしました。
ここで生まれたのが、
Intentional cropping is part of the composition.
「意図された切れ方も、構図の一部である。」
という考え方です。
すべてを画面内に収めればいいわけではない
印刷用のデータを作るときには、重要なものが裁断で切れないように気をつける必要があります。
でも、それはすべてのキャラクターを無理やり画面内へ押し込むという意味ではありません。
今回の下段キャラクターは、もともと画面の外へ続いているような構図です。それを全部見せようとすると、キャラクターの大きさや距離感が変わり、原画の演出まで変わってしまいます。
だから今回は、作者が意図した構図を守りながら、印刷上の問題が起きないように調整しました。印刷レイアウトは、絵を安全な構図へ描き直すための工程ではありません。
作者が作った構図を、そのまま紙へ届けるための工程。
今回も、その考え方を大切にしました。
3. Stage1〜2|竜宮城の内部を描く。でも、説明しすぎない!

続いて、竜宮城内部の背景制作です。今回の原画には、キャラクターたちの配置や演技は描かれていますが、背景はほとんどありません。
原画には、ほとんど背景がありませんでした
つまり、AIに自由に描いてもらおうと思えば、いくらでも豪華な宮殿を作ることができる状態です。
・立派な柱
・豪華な装飾
・きらびやかな天井
・複雑な建築模様
そんな背景を描くこともできるでしょう。
でも、今回の絵本では、それは少し違います。背景が豪華すぎると、乙姫と主人公たちの対話よりも、建物の方に目がいってしまいます。
そこで今回の背景制作では、
Suggest the palace. Don't describe it.
「宮殿を匂わせる。説明しない。」
という考え方を採用しました。
さらに、
Luxury through restraint.
「描き込まずに、格を出す。」
Leave room for the characters.
「キャラクターのために、余白を残す。」
という方針も設定しました。
少ない装飾だけで、竜宮城らしさを作る

今回の背景では、色や装飾をかなり絞りました。
大きな壁面には、温かみのあるアイボリー色。建築の装飾には、少しくすんだ翡翠色。そして、ところどころに珊瑚色のアクセント。
さらに、貝や珊瑚、曲線的な柱、吊り飾りなどを少しだけ加えます。これだけでも、海底にある宮殿らしい雰囲気が生まれます。
しかも、背景の情報量を抑えているので、キャラクターたちの表情や動きが目立ちます。

最初の案から、ほんの少しだけ和風の雰囲気やディテールを加えた第2案も制作しました。

比較した結果、最終的には第2案を採用しました。
ここで面白かったのは、竜宮城らしさを表現するために、建物の構造を細かく説明する必要がなかったことです。
貝や珊瑚、曲線的な装飾、色の組み合わせ。そんな少数の記号だけでも、読者は「ここは竜宮城なんだな」と感じられます。
今回の実験から、
Worldbuilding does not require explanation.
「世界観は、説明しなくても成立する。」
という考え方が生まれました。
背景は、キャラクターが生きるための舞台
これまでのProject LUMINAでも、背景は主役ではなく、キャラクターたちが暮らす世界を包み込むものとして考えてきました。
今回のScene7では、その考え方が室内空間でも機能することを確認できました。
森や海の背景だけでなく、宮殿の内部でも同じです。すべてを描き込まなくても、世界観は成立します。
むしろ、描き込みを抑えることで、キャラクターの存在感が強くなることもあります。今回の竜宮城内部は、まさにそんな背景になりました。
4. Stage3|手描き感を出すために、ノイズを足す必要はなかった!
背景が完成したら、次はキャラクターの着彩です。今回も、原画のキャラクターデザインは変えません。
キャラクターの形は変えず、絵具だけを変える
・ビーバー兄弟の形
・デブラの姿
・乙姫の表情
・周囲の海の生き物たち
これらは、私が描いた原画の大切な要素です。AIには、形を描き直すのではなく、表面の画材感だけを変えてもらいます。
今回の基本ルールは、
Same cast. Same shapes. New surface.
「同じ役者。同じ形。新しい絵肌。」
というもの。
ビーバー兄弟には、木のおもちゃのような丸みを残しながら、Soft Layered Gouacheの柔らかな塗り重ねを加えます。

おお、最初の生成から、かなりいい仕上がり!でも、ここでもう少しだけ実験してみたくなりました。
「さらに手描き感を出すことはできないだろうか?」
という疑問があったからです。
手描き風のフィルターをかければいいの?
AIイラストを手描き風にしたいとき、よく思いつくのがテクスチャーの追加ですよね。
例えば、
・紙のザラザラ感
・絵具の粒子
・かすれ
・ノイズ
こうしたものを画面全体へ重ねれば、確かにアナログ風には見えるかもしれません。
でも、以前のSceneでも経験したように、テクスチャーを追加しすぎると、今度は「アナログ風フィルターをかけた画像」に見えてしまうことがあります。
そこで今回は、違う方法を試しました。
それが、
Soft Layered Gouache — Hand-Painted Variation
という実験。
今回触るのは、画面の上に重ねるテクスチャーではなく、色そのものの内部です。
例えば、ビーバーの茶色。同じ茶色でも、部分によってほんの少し濃淡を変えます。亀の緑色にも、微妙な絵具の重なりを作ります。均一な色面にせず、小さな筆致や色の揺らぎを残すんです。
ここでの合言葉は、
Preserve the form. Enrich the paint.
「形は守る。絵具だけを豊かにする。」
そして、
Variation, not texture.
「テクスチャーではなく、揺らぎ。」
というもの。

さらに深みがうまれて、いい具合に絵の具の重なりや塗りの揺らぎがありますが、少し陰影が付きすぎたような気もします。
これも悪くないけど、さらなるブラッシュアップということで陰影をほんの少し引いてみると……

おお!これはかなり理想に近い仕上がりかも!
色ムラや筆跡がかなりアナログっぽい質感になっていて好きなテイストです。
質感は、フィルターではなく絵具の中にある

最初に出した初稿と最後の3枚目を比較してみると、かなり面白い違いが生まれました。
画面全体にノイズを追加したわけではないのに、キャラクターの色面に微妙な揺らぎが生まれ、手描きらしい雰囲気が強くなった。
ここで生まれたのが、
Texture belongs to the paint, not to the filter.
「質感はフィルターではなく、絵具の中にある。」
という考え方です。
手描き感は後から上に飾りつけるものではなく、
「色を塗る過程で生まれる、微妙な不均一さの中にある。」
そんなことを今回の実験から学びました。
しかも、キャラクターの形や背景を変えずに、表面の絵具だけを調整することに成功。これは、今後のProject LUMINAでもかなり役立ちそうな発見です!
5. Stage4|十分いい仕上がりなら、あえて修正しない
続いて、輪郭線の調整です。
これまでのSceneでは、輪郭線を背景や絵具へ自然になじませるために、さまざまな実験を行ってきました。今回も基本的な考え方は同じです。
輪郭線を自然になじませる
光が当たる側の線は、少し柔らかく。影側の線は、形を支えるために残す。そして、表情を伝える大切な線は消さない。
Outer edges breathe. Expression lines speak.
「外周は呼吸する。表情線は語る。」
という原則です。

ところが今回は、最初の調整から非常にいい仕上がりになりました。

線が背景になじみながらも、キャラクターの表情はしっかり残っています。ここで、ふと思いました。
「これ以上、触る必要があるのかな?」
Scene6で学んだ「止める」が、今回も役立ちました
前回のScene6では、修正を重ねることが必ずしも改善になるわけではない、ということを学びました。
今回は、その考え方を実際の制作判断に使うことができました。
もちろん、さらに線を薄くすることもできます。もっと空気になじませることもできます。
でも、そうした修正によって得られる改善は、ほんのわずかかもしれません。一方で、今あるバランスを壊してしまう可能性もあるわけで。
そこで今回は、追加修正を行わず、そのままStage4を確定しました。
Knowing when to stop is part of art direction.
「どこで止めるかを知ることも、アートディレクション。」
前回のScene6で生まれた考え方が、今回さらに実践的な判断基準になってきたように思います。
6. Stage5|温かすぎる!今度は暗すぎる!感情表現の難しさ
今回、特に面白かったのがStage5の比較実験です。Stage5では、背景とキャラクターを同じ空気の中へなじませます。
このシーンでは、竜宮城の温かさを残しながら、乙姫との対面にふさわしい緊張感を作ることが目標でした。
最初の案は、とても綺麗。でも、安心しすぎている?

まず完成したのが、Stage5-Aです。これが、なかなか美しい仕上がりでした。
背景とキャラクターが自然になじみ、柔らかな光に包まれています。竜宮城の内部も温かく、居心地がよさそうです。
でも、ここでひとつ違和感がありました。
ちょっと安心感が強すぎるかも?
今、ビーバー兄弟とデブラは、乙姫の前で必死に事情を説明しているところ。周囲の海の生き物たちも、まだ怒っています。
この先どうなるのか分からない場面なのに、画面全体があまりにも穏やかだと、物語の緊張感が薄れてしまうというか。
絵としては美しい。でも、今回のSceneとしては、少し優しすぎた。
緊張感を足してみたら、今度は暗くなってしまった!

そこで次に、Stage5-Bを制作。今度は、もう少し緊張感を残す方向です。
ところが、完成した画像を見てみると、別の問題が生まれました。画面全体が少し暗くなり、セピア色っぽい重さが増えてしまったんです。

確かに、緊張感は強くなったけど、これは少し違う気がします。なぜなら、「緊張しているから画面を暗くする」という、分かりやすすぎる演出になってしまっていたから。
今回の乙姫は悪役ではありません。竜宮城も、怖い場所ではありません。それなのに、画面を暗くしてしまうと、まるで恐ろしい宮殿へ連れてこられたような印象になってしまいますよね。
緊張感は必要。でも、暗さで表現したいわけではない。ここで、改めて今回の目標を考え直しました。
第三案で、ようやく求めていた空気へ
そこで、Stage5-Cを制作しました。
今回の方針は、
Keep the warmth. Reduce the comfort.
「温もりは残す。安心させすぎない。」
そして、
Tension through restraint, not darkness.
「暗さではなく、抑制で緊張を作る。」
というものです。
今回は、画面を暗くするのではない。色を大きく変えるわけでもない。
竜宮城の温かさは、そのまま残したままで、ほんの少しだけ空気を静かにする。光を少しだけ抑える。場の雰囲気を、ほんの少しだけ張り詰めさせる。
そんな繊細な調整を行いました。

すると、ようやく求めていた雰囲気に近づきました!
・竜宮城の温かさ
・乙姫の品格
・ビーバー兄弟とデブラの不安
・周囲の海の生き物たちの怒り
・この先どうなるのだろうという緊張感
それらが、同じ画面の中で共存できたんです。

最終的にStage5-Cを採用しました!
7. 緊張した場面だからといって、暗くする必要はない
今回のStage5で、かなり重要な発見がありました。
それは、
Emotion does not have to be painted directly.
「感情は、直接描かなくてもいい。」
ということです。
感情を色で直接説明しなくてもいい
例えば、
・緊張した場面だから暗くする
・悲しい場面だから青くする
・楽しい場面だから鮮やかにする
こうした演出は、分かりやすい方法です。
でも、物語の感情は、そんなに単純ではありません。今回のScene7には、いくつもの感情が同時に存在しています。
・主人公たちの不安
・海の生き物たちの怒り
・乙姫の威厳
・竜宮城の温かさ
そして、これから何が起こるのかという好奇心。これらを、ひとつの色だけで表現することはできません。
だからこそ、今回は画面全体を暗くするのではなく、空気のわずかな抑制によって緊張感を作ることにしました。
色で感情を伝えるのではなく、空気で感情を伝える
実は、この考え方はProject LUMINAの初期から大切にしてきたものでもあります。
「色で感情を伝えるのではなく、空気で感情を伝える。」
今回のScene7では、その考え方を具体的な比較実験で確かめることができました。温かい背景でも、緊張感は表現できます。明るい空間でも、不安は描けます。
大切なのは、感情を強調することではありません。その場面に必要な感情を、正確に残すことです。今回の制作では、そんなことを学びました。
8. Stage6|印刷保護なのに、画面が暗くなってしまった!
Stage5-Cで、今回の作品表現は完成しました。続いてStage6では、印刷時に失われそうな色や階調を保護するための調整を行います。
作品表現は完成。最後は印刷へ向けた保護です
ただし、ここで大切なことがあります。Stage6は、作品をさらに綺麗にするための工程ではありません。すでに完成した表現を、できるだけそのまま紙へ届けるための工程です。
今回も、青緑や茶色、深緑などの暗部から中間調を保護する方針でStage6-Aを制作したのですが……ここで予想外のことが発生!

画面全体が、少し暗く沈んでしまったんです。

本来は、暗い部分の階調を守りたかっただけなのに。でも、AIがその指示を「暗い部分を強くする」という方向へ解釈してしまった模様。
結果として、せっかくStage5-Cで作った温かさや微妙な緊張感が、少し変わってしまったんですよね。う~む、これは困った。
印刷保護のための工程なのに、作品の見た目を変えてしまっています。
「情報を守る」と「見た目を変える」は違う
そこで、Stage6の考え方をもう一度見直すことに。
今回の新しい方針は、
Protect information. Don't change appearance.
「情報を守る。見た目は変えない。」
というものです。
さらに、
Lift the loss, not the image.
「絵を明るくするのではなく、失われる階調だけを救う。」
という考え方も加えました。
暗い部分の情報を守るために、画面全体を明るくしたり暗くしたりする必要はない。必要な部分だけを、できるだけ目立たないように保護していきます。

この考え方で制作したのが、Stage6-B — Invisible Print Protection。

3枚を並べて比較した結果、Stage6-Bが最もStage5-Cの印象を維持しながら、暗部から中間調の情報を守れていました。
そこで、Stage6-Bを今回の完成印刷候補として正式採用に決定!
変わらなかったことが、成功の証拠になる
今回のStage6では、面白い発見がありました。
普通、画像を修正したら、修正前よりも良くなっていることを期待しますよね。でも、Stage6では少し違います。
Stage6は、すでに完成した作品を守る工程です。だから、見た目が大きく変わってしまうことは、むしろ問題になる場合があります。
ここで生まれたのが、
The closer it looks, the better it protects.
「見た目が近いほど、正しく守れている。」
という考え方。
もちろん、印刷したときにどう見えるかは、実際の紙で確認する必要があります。
でも、少なくとも画面上の比較では、Stage5-Cの魅力をできるだけ変えないことが、重要な判断基準になりました。これは、今後の印刷用イラスト制作でも役立ちそうです。
9. 今回の不採用案は、どれも大切な発見をくれました
今回の制作を振り返ってみると、興味深いことがあります。それは、不採用になった画像にもそれぞれ大切な役割があった、ということです。

例えば、Stage5-A。温かく、美しい画像だけど、少し安心感が強すぎる印象。

Stage5-B。緊張感は強くなったものの、暗さで感情を説明しすぎてしまった気も……。

Stage6-A。印刷向けの階調を守ろうとしたら、画面全体が少し暗くなってしまった。
どれも、単純に「AIが失敗した画像」というわけではないんです。むしろ、何をしない方がいいのかを教えてくれた比較実験だったのではないかと。

正直、最初からStage5-Cのような微妙な空気感を指定できていたかというと、難しかったと思います。
温かすぎる案を見たからこそ、もう少し緊張感が必要だと分かったし、暗すぎる案を見たからこそ、暗さで感情を表現するのは違うと分かったわけで。
その両方を比較したからこそ、今回求めていた空気感が、よりはっきりしたんです。
そしてStage6でも、暗くなってしまった案があったからこそ、「見た目を変えない印刷保護」という考え方にたどり着きました。
こうして振り返ってみると、採用しなかった画像にも、ちゃんと意味があったんですね。制作ログを残しておくことの面白さも、こういうところにあるのかもしれません。
10. Scene7で学んだのは、「もっと」ではなく「ちょうどいい」
今回のScene7では、さまざまな工程で似たような判断をしていました。
背景を作るときには、豪華に描き込みすぎない。
キャラクターを着彩するときには、手描き風のノイズを追加しすぎない。
輪郭線を調整するときには、消しすぎない。
空気感を統一するときには、温かくしすぎない。
緊張感を作るときには、暗くしすぎない。
印刷保護をするときには、画面を変えすぎない。
こうして並べてみると、すべてに共通する考え方があります。それは、「もっと」ではなく「ちょうどいい」を探すこと。
AIを使えば、背景をもっと豪華にしたり、キャラクターをさらに綺麗にすることは簡単です。輪郭線をもっと柔らかくしたり、感情をもっと強調することも可能です。
でも、それが必ずしも作品にとって良いとは限らないんですよね。むしろ、少し抑えた方が、物語の魅力が伝わることだってある。
前回のScene6では、
Stop when the painting is still breathing.
「絵がまだ呼吸しているところで、止める。」
という言葉が生まれました。
そして今回のScene7では、その考え方がさらに深まりました。
・どこで手を止めるか
・何を残すか
・何を強調しないか
そうした判断も、作品を作るための大切な技術なんだと思います。
結果的に、このシーンの印刷用最終採用候補は次の3枚に絞られました。



……各工程で自分が最も気に入ったものをピックアップしてみました。
AIによる画像生成と加工はここまで一旦終了。あとはこれらを実際に印刷して色味や全体の印象を確認してから最終判断を下し、気になる箇所を手動で修正していくという流れになります。
まとめ|感情を強くするのではなく、正確にする
さーて、そんなわけで今回は『ビーバーとビーすけの竜宮城大作戦』のScene7「乙姫との対面」のリマスター制作工程をご紹介しました!
シーン7の制作では、特に印象的な発見がいくつもありましたね。
・意図的に画面から切れているキャラクターも、構図の一部として守る
・背景は描き込みすぎず、少数の記号だけで世界観を成立させる
・手描き感はノイズではなく、色の内部にある揺らぎから生まれる
・輪郭線は、十分に良ければ追加修正せずに止める
・温かさと緊張感は、同じ画面の中で共存できる
・感情は、暗さや彩度で直接説明しなくても表現できる
・印刷保護は、完成した作品の見た目をできるだけ変えないことが大切
・不採用案も、何をしない方がいいのかを教えてくれる
そして、今回のScene7を象徴する言葉として、最後に残しておきたいのが、
Don't make the feeling stronger. Make it more precise.
「感情を強くするのではなく、正確にする。」
という言葉です。
乙姫との初対面には、いろいろな感情が混ざっています。
・主人公たちの不安
・海の生き物たちの怒り
・乙姫の威厳
・竜宮城の温かさ
・この先何が起こるのだろうという好奇心
それらを、ひとつの色や明るさで説明することはできません。
だからこそ、今回の制作では、感情を強調するのではなく、その場面にふさわしい空気を探しました。
最初の案は温かすぎました。次の案は暗すぎました。でも、その両方があったからこそ、最後にちょうどいい雰囲気へたどり着くことができました。
今回のScene7は、絵を作る技術だけでなく、絵を触らない技術についても考える機会になったんじゃないかと思います。
そして何より、AIでイラストを制作するときにも、最後に大切なのは作者自身の判断なのだと感じました。
・どの画像を採用するのか
・何を守るのか
・何を変えないのか
その判断を積み重ねることで、少しずつ自分の作品らしい世界が育っていくのだと思います。
次のScene8でも、竜宮城の内部で物語が続きますが、今回作った温かくて少し張り詰めた空気が、次の場面でどのようにつながっていくのか?
引き続き制作の裏側をご紹介していきたいと思います!
以上、ふるもーすでした!
📖試行錯誤の先に、一冊の絵本が生まれました。

AIと一緒に悩み、描き直し、何度も試して完成した『ビーバーとビーすけの竜宮城大作戦』。
この制作ログで紹介してきたイラストや物語が、実際に一冊の絵本になっています。あなたもビーバーたちと一緒に海の冒険に出かけませんか?

『ビーバーとビーすけの竜宮城大作戦』